【巨人】「見送り」から方針転換 田中将大獲得決定の背景にある2つの理由
田中将大の獲得が確実となった巨人だが、その道のりは決して順風満帆ではなかった。球団の関係者の一人は「獲得に動くとは全く予想していなかった」と驚きを隠せなかったという。
田中が楽天を自由契約となったのは、先月24日の「プレミア12」決勝戦の日だった。今季15勝を挙げ、4年ぶりのリーグ制覇に貢献した菅野がメジャー挑戦を決めたため、先発投手の補強は急務となっていた。しかし、当初は田中の獲得については「見送り」とする方針だった。
しかし、その後、状況が一変することになった。まず、先発投手の補強が思うように進まなかった。ソフトバンクからFA宣言した石川柊太投手(32)の獲得を目指していたが、12月11日にロッテへの移籍が決定。これにより、先発投手の補強が宙に浮いてしまった。
さらに、外国人枠の制約もあり、新たに先発投手を補強するには、守護神ライデル・マルティネス投手(28)の獲得もあって枠が埋まっていた。そのため、日米通算197勝の実績を持つ田中への期待が高まっていった。
もう一つの要因は、田中に対する球界の「救済ムード」が強まったことだった。ソフトバンクの王球団会長や中畑巨人OB会長などが、公の場で次々と田中の今後を心配するコメントを発信。万が一、浪人することになれば、彼の野球人生に大きな傷が残ることになるという懸念が広がり、これが巨人の決断に影響を与えたとする見方もある。
そして、最終的な決断には、13年のWBCで田中と共闘した阿部監督の意向が大きく反映された。来季の巨人は、先発候補が全員20代と若返りを果たしたものの、長いシーズンを戦い抜くために経験豊富なリーダーが必要だと判断された。そこで、数多くの試練を乗り越えた田中が白羽の矢を立てられた。
支配下選手枠の上限が70人である以上、田中の加入は戦力としても計算されている。昨季、4勝にとどまった菅野が久保巡回投手コーチや桑田二軍監督の指導でセ・リーグMVPを受賞するなど、ベテラン選手を再生させるノウハウが巨人にはある。田中も、昨年10月に受けた右ヒジのクリーニング手術の影響で今季は1登板で0勝に終わったが、新たな環境で復活を遂げることが期待されている。