女子体操「全員が10代」異例のメンバー構成に“懸念点”は? 最年少は16歳…パリ五輪に向け、強化本部長が語った“不安と伸びしろ”

5月18日、パリ五輪代表最終選考会を兼ねた体操のNHK杯女子決勝が行われ、パリ五輪代表5名が決定した。順位によって自動的に決定するNHK杯上位4名は、優勝して3連覇を達成した宮田笙子、2位の岸里奈、3位の岡村真、4位の中村遥香だった。
この4名の得点と組み合わせてチーム得点が最も高くなる選手、つまり団体総合での得点への貢献が期待できるチーム貢献度から選出される残り1名は、跳馬で高得点をたたき出した牛奥小羽となった。

メンバー全員が十代は史上初
4月の全日本選手権の得点も持ち越されての大会、全日本選手権を1位で終えていたのは宮田。近年、日本女子を牽引してきた存在だが、それに違わない演技を見せた。NHK杯の数日前に左内転筋を負傷し万全とは言えない中、最初の種目の跳馬で14.300点の高得点を出すと、続く段違い平行棒は13.733点でトップをキープ。平均台、最後のゆかもまとめ、初めての五輪切符を手にした。
岸の演技も輝きを見せた。跳馬では宮田と同得点、段違い平行棒でも高得点で宮田と拮抗した勝負を演じる。平均台こそ序盤にミスが出たがゆかでは杉原愛子と並ぶトップの13.366点。宮田と同じく初めての五輪切符を手にした。
宮田と岸に限らない。岡村、中村、牛奥も五輪出場は初めて。しかも宮田は19歳、岸は16歳、岡村が18歳、中村は16歳、牛奥が19歳と全員が十代、平均年齢は17.6歳。これまでを振り返ればある意味異例のメンバー構成となる。団体総合に出場した大会で全員が五輪初出場となるのは1984年ロサンゼルス五輪以来のこと。団体戦のメンバー全員が十代であるのは史上初である。
東京五輪からは村上茉愛、平岩優奈、畠田瞳が引退
ここ3大会の日本代表は次のようになっている。
〈2012年ロンドン五輪〉
- 新竹優子 21歳(北京五輪出場)
- 田中理恵 25歳
- 鶴見虹子 19歳(北京五輪出場)
- 寺本明日香 16歳
- 美濃部ゆう 22歳(北京五輪出場)
〈2016年リオデジャネイロ五輪〉
- 内山由綺 18歳
- 杉原愛子 16歳
- 寺本明日香 20歳(ロンドン五輪出場)
- 宮川紗江 16歳
- 村上茉愛 20歳
〈2021年東京五輪〉
- 杉原愛子 21歳(リオデジャネイロ五輪出場)
- 畠田瞳 20歳
- 平岩優奈 22歳
- 村上茉愛 24歳(リオデジャネイロ五輪出場)
- 芦川うらら 18歳
東京五輪ののち、時期はそれぞれに異なるが村上、平岩、畠田は引退。2022、2023年の世界選手権代表にはすでに五輪代表経験者はいなかったため、自然な流れかもしれない。
「ちょっと、怖いですね」懸念点はどこにある?
しかし懸念もある。4年に一度の大舞台は格別の緊張を強いられるが、経験者がいないことがどう影響するのかという点だ。日本体操協会の田中光女子強化本部長も「ちょっと、怖いですね」と語っている。ただ、そこで言葉は終わっていない。
「特別な場ですから、経験者がいない不安もありますが、若いだけに当たれば大きいですし、伸びしろに期待しています」
五輪未経験、十代とはいえ、実力はたしかだ。2022年の世界選手権団体は7位、2023年は8位だったが、全日本選手権、NHK杯での得点からするとさらに上位に進出できるところに来ている。アメリカは別として、そのあとの争いに絡んでいける可能性を示している。それもまた、この年代ならではの伸びを示している。そしてここから夏までは、さらに成長していくための時間でもある。
エース宮田が語った“自覚”
NHK杯3連覇を果たした宮田はまぎれもなくエース格の存在だが、本人の自覚も強い。
「演技で信頼を得ていくことができたらと思います」 「ミスのない演技で団体のメダルにつなげたいです」
昨年のNHK杯も怪我を抱えている中で「痛みに勝たないと。自分に勝たないと」と強い気持ちを持って優勝。そのときにはすでに「エースという言葉はこれからも自分にかかってくると思いますけど、エースらしい演技で引っ張っていけたら」と語っている。
昨年より1年を経て、より自覚を深めた姿が今大会にはあった。パリで団体のメダルを獲得すれば60年ぶりとなる。心配な点はあるとしても、楽しみなメンバーがそろった。あとは伸びしろをどう生かすかに目標達成はかかっている。