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右差しを許して押し込まれ、右足を徳俵にかけられた琴桜が、観客のどよめきの中で一気に逆襲に転じた。しっかり引いた左上手からの投げで、大の里を土俵下まで吹き飛ばし、自己最多タイとなる13勝目を挙げた。先輩大関としての意地を見せ、悲願の初優勝に王手をかけると同時に、初の年間最多勝も決定した。
オンとオフの切り替えは完璧で、支度部屋では「落ち着いて取れたと思います」と冷静に語り、逆転投げについても「反応してくれたので」と淡々と話した。千秋楽では豊昇龍戦が組まれており、「変わらずしっかり準備して、やるだけなんで」と相星決戦に向けて意気込みを見せた。
年間勝利数で大の里と首位タイとなり、その直接対決を制したことで、今年65勝目を挙げ、タイトルを手中にした。佐渡ケ嶽部屋からの年間最多勝は初で、祖父の先代佐渡ケ嶽親方(元横綱琴桜)も成し得なかったことだ。
「それは後からついてくるもの」と控えめに語ったが、祖父からしこ名を引き継ぎ、父である佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)を師匠とする相撲一家の27歳が、部屋の歴史に新たなページを刻んだ。
もし14勝で賜杯を手にすれば、昨年夏場所の照ノ富士以来となり、大関としては2017年初場所の稀勢の里以来、横綱昇進への強力な足掛かりとなる。八角理事長(元横綱北勝海)は「理想に近い。近い将来、(照ノ富士に加え)3横綱にならないかな。来場所、2人でね」と、年明けの初場所でのダブル綱とりに期待を寄せた。