貴景勝、重圧から解放され「けじめ」の10日間　指導に本腰を入れる―大相撲

平成以降に昇進した大関の中で、最年少となる28歳1カ月で現役を引退した貴景勝。引退が早すぎるように見えたものの、後悔はなかった。

9月の秋場所14日目に開かれた記者会見で、涙を見せることなく「素晴らしい相撲人生を歩ませてもらった」と語った。その言葉には深い実感が込められていた。

秋場所2日目、1場所での大関復帰をかけて後輩の王鵬に敗れ、引退を覚悟。その決断は11日目の夜に下され、11月の九州場所中にはその心境についても明かされた。

引退の決断が揺るがないことは分かっていたが、「物心ついた頃から相撲を取っていたので、10日間くらい振り返りたかった。けじめをつけるつもりだった」と冷静に自己を見つめ直した結果、最終的に「改めて悔いはない」と確信した。

引退後は減量し、スリムになった姿が話題となった。「特別なダイエットはしていない」と笑いながら語るが、現役時代は体格に恵まれていなかったため、常に体作りに意識を向けていた。「食事の際は、牛肉何グラム、鶏肉何グラムと計算しながら食べていた」と振り返る。その一方で、今では「食事がとてもおいしい。好きな物を好きなだけ食べられるし、居酒屋にも行ける」と楽しんでいる。現役時代の終盤には、少なくなっていた自然な笑顔を取り戻している。

引退後は、本場所で警備を担当する一方、常盤山部屋の弟弟子たちの取組を花道で見守り、すぐに助言を送っている。「直後にやるのがいい。一晩寝れば忘れてしまうものだから」と、指導者としての役目に本腰を入れている。現役時代に比べ、「刺激が足りない」とも漏らすが、それは強い重圧から解放されて安堵した表れでもある。新たな相撲人生を歩む充実感がにじみ出ている。

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